サワガニを迎え送った日

連れて帰ったサワガニ

水族館で釣り体験した一匹のサワガニをうちに迎え、翌日死んでしまった話です。

川に行ったわけでもないけどサワガニを迎えた経緯

週末よく行く水族館「マリホ水族館」には、いきものと触れ合えるお店「いきものふれあい学校」(3歳以上入館料600円・当日限り再入場可能)があります。小鳥やハムスターと触れ合ったり、お迎えするにはハードルの高めなエキゾチックアニマルを撫でたりできるので子どもたちも大好きなお店。週末は小学生くらいのお子さんで賑わっています。

奥にはザリガニ釣りができるコーナーもあり、スタッフさんに声をかけることで参加させてもらうことができます。参加料やルールは日によって違うようなので確認してくださいね。
(この日は一人一回無料でしたが、日によってジャンケンで勝ったらとか有料でとか)

スルメイカをつけた竹竿をプールに垂らしザリガニを釣るのですが、この日はカニも放たれていました。珍しかったので息子も私もカニを中心に狙うようにして、喧嘩中のカニ2匹の間にスルメを引っ掛ける形で見事釣り上げました。

いつもはすぐにリリースするのですが、ふと息子くんに「この子のうち片方連れて帰ろうか」というと「うん、こっち」と即決したので一匹だけリリースして係の方へ。容器代を払い晴れてうちのカニさんとしてお迎えすることになりました。

お世話は簡単ですよと言われたものの

容器に移す間、お店の方に買い方を確認したところ「ザリガニと一緒です、陸地を作ってあげてくださいね」と言われました。うちは既にメダカを飼っていたのですがメダカ水槽に陸地は必要ありません。

バケツの中のカニ

この日はとりあえずバケツに放ちましたが、息子くんは納得せず「おうち気に入ってないんじゃない?」というのでパパと夕方からダイソーへ行って急遽虫かごを買ってきてもらいました。広いケースに放つと隅っこを探して登ったり隙間に落ち着いたりしてなんだかもうすでにパパも娘もみんなして「かわいいな〜」とメロメロに。

息子くんは「ようこそ、カニ」と言いながら、満足げにご飯を食べるときも眺めていました。

ケースの中のカニ
もっといっぱい写真撮っておけばよかったなと今では思います。。

心配しながら迎えた朝とカニさんの異変

元気でも夜の間に弱って死んでしまうかもしれない、そう思っていた私は朝が来るのが少し心配でした。でも蟹は生きていました。寝る前に与えた乾燥小エビを隙間に持ち込み、大事そうに抱えて動いていました。

調べれば調べるほど無知を知るサワガニの世界。。好物や餌をAmazonでポチりながら、水替えがメダカに比べかなりの頻度であることがわかり、この日のうちに水替えをしようと準備をしていました。カルキ抜きには湯を沸かしたものを冷まして使います(カルキ抜きを使うもありだと思いますがうちは今そうしていました)。そんな中朝ごはんを食べながらカニさんを見ていた息子が言いました。「カニさん泡出してる」。

少し気になりました。この度知ったのですが、サワガニはエラ呼吸です。苦しくなると泡を吹くと見かけていたので、水質が気になっていました。(子どもが幼稚園行ったら水替えしてやろう)そう思ったのが遅すぎたのかもしれません。みるみる弱り、水替えも虚しく子どもたちが登園し終わった頃、ついに息絶えてしまいました。

サワガニはたくさん食べ物がなくてもすぐ死ぬことはなく、環境が良ければ10年生きると言われています。なので連れ回したことで弱っていたのかな、水が悪かったのかな、など色々原因を考えました。し、無知のまま迎えてしまったことをやはり悔やみました。

可愛がっていた子どもたちのことを思うとさらに胸が締め付けられました。伝えたら泣くかな、登園させてよかったのかな、とまで思う始末。

送る儀式を終えて思うこと

子どもたちはまだ、身近な生き物が命を終えてしまう経験をしたことがありませんでした。そのため一緒に亡骸に触れ、墓を作り、手を合わせる行為は、気持ちを切り替え未来へ向かうのにとても重要なことがわかりました。

子どもたちが帰ってくるまでの間、私はちょっといいおやつを用意していました。悲しむであろう子どもたちに、美味しいものをたくさん食べてほしいと思いました。お墓に飾る花を用意し、そのあとは遊びに連れて出ることも考えていました。そうしているうちに、幼い頃参加したお葬式で仕出しのご馳走やお酒が振る舞われていたことも思い出したりしました。残された人たちは、美味しいものをたくさん食べ、忙しく働き、故人の話を前向きにしていました。

少しケースの中は片付けましたが、亡骸はそのままにし、幼稚園へお迎えに行きました。幼稚園から帰る途中で子供に伝えます。

「あのね、大事な話がある。カニさんがお昼の間に死んでしまった」

「え…どこ?」

「おうちにまだいるよ」

「なんで?」

「ママもなんでかはわからない。弱ってしまっていたのかもしれないし、もっと勉強しなきゃと思ったよ」

「そっか。。」

家に帰るとすぐにカニさんのところへ向かい、もう動かないそのこを割り箸で掬い上げ、ティッシュの上に置いてやりました。蟹は怖い寄生虫がいると聞いていたので、直接は触らずお箸で触るようにさせました。

ふたりは動かなくなった蟹さんをじっと眺め、「足が四対、はさみは左右に、こっちの方が大きいはさみ…」など言いながらしばらくじっと観察し、程なくして庭に埋めに行きました。土をかぶせた後に小枝を立ててやると、丁寧に手を合わせお辞儀をしました。部屋に戻り手を洗った後は、いつもよりちょっと多めのおやつを、みんなでゆっくり食べました。

カニさんのお墓

ケースと餌は、きれいに掃除した後収納へしまいました。いつかまたカニさんを迎えるその日までに、もっと勉強して、来た子を当たり前に天寿を全うさせてやれるように。大人も子供もたくさんの学びをもらった二日間でした。